sland伊藤悠さん&小池博史によるアートトーク レポート
7月25日、流山で7月30日から開催されてる「パパ・タラフマラ ファイナル美術館」の特別企画としてアーツ千代田3331に拠点を置きつつ全国4カ所でスペースを展開されているislandのisland ATRIUM(柏市)にてisland代表伊藤悠さんと小池博史によるアートトークを行いました!
今回のトークイベントは、解散発表を受け、パ パ・タラフマラの30年間の活動と30年を経て感じる日本と世界のアートシーンについてお話させて頂くこととなりました。
前半はこれまでの過去作品の映像を用いて、これまでのパパ・タラフマラ生み出してきた作品を紹介、制作意図なども小池から説明されました。
その1からの続きです・・・ (その1コチラ)
小池 |
うん。情報に慣れているっていうか、情報でしか受け止めないんですよね。そこの問題って大きいかなと僕は思ってるんですよね。特にやはりスーパーフラット以降の問題点っていうのはとっても大きいと思ってるんですよ。あれは僕は「日本売り」だと思ってますから。「日本売り」っていうのを実は政府含めてみんなでやってると。「恥ずかしくねえの?」って言いたいんですけど、わかんないんですよね。わかんないのはなぜわかんないのかっていうと、やっぱり身体の問題なんですよね。体で感じなくて情報でしか入ってこないんで、非常にわかりやすい方向性にもっていってしまっている。というのは大きいんじゃないかと思いますね。
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伊藤悠氏(以下、伊藤) |
オリエンタリズム的なものを、向こうが欲している日本的なものを、わかりやすいかたちで、しかもちょっと見せやすいかたちで、マーケティング的に出しているのかな、と思いますね。どちらかというと私は、まあどっぷり「アート」っていうところからやってるとは思うんですけど、それにあまり実感がなかった。情報的な、本やあるいは映画、いろいろあったかと思うんですけど、でもからだに直接来ない。あるいは考えるに至らない部分がすごくあって、他の「アート」っていうのは、みんなに発するんだけど、「アート」はひとりひとりに対して、しゃべることができる方法だと思っていて、だから、「アート」の方にきたんじゃないんですけど、その中でスーパーフラット的な戦略のありかたっていうのは、やっぱり私としては、ちょっとなんか、それだけでいいのか、って思うところがあって。
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小池 |
いや、いいのか?っていうよりね、物凄く居心地悪いんですよ。何が居心地が悪いかっていうと、極めて表面的であるということ。でフラットの意味って色々ありましてね。自分たち自身で「無意味だよ」って。これほど平板なんだよっていってること自体、やっぱり間違ってるとしか思えないんですよ。
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伊藤 |
そうですね。空虚さを出してしまうと、ほんとに虚しくなってしまうっていうか。生きてることを実感できないっていうか。
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小池 |
そこなんですよね。結局生命力の薄さっていうのが見えてきてしまうんで。それこそアートの意味っていうのは、生命を、生命の力っみたいなのを見せることじゃないのかなって僕は。(思います)
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伊藤 |
ええ、先ほども、根源的な力っておっしゃってましたが。
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小池 |
ええ。それがどうも消えたものの方がいいんだとやられると、ほんと「こんな国にいたくねえよ」って思ってしまうところはありますよね。
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伊藤 |
うーん。国際的な言語っていうのを、小池さんはできたからこそ、あ、今いろんな意味で言語って今言いましたけど、だからこそ、こういうことがすごく、普通にできることが重要なんですけど、例えばマクベスだったり、そういうヨーロッパ的な文脈の言葉を、日本人が同等に解釈して、自分の言葉で発してきたっていうのは、すごく大事なんじゃないかな、そこが希望だって私は思うんです。
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小池 |
それにはね、やっぱり多様性なんですよ。ほんとうにひとことでいってしまうといかに多様であるかしか、基本道筋ってないはずなんですよ。ところがフラットが一番いい例なんですけど、多様じゃないんですよ。多様ではないというのが自分たちから発信しているっていうのは、やっぱり・・・
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伊藤 |
うん、危ないですよね。すごく危ないと思いますよね。全体主義的であってしまうっていう。
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小池 |
そうでしょ。
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伊藤 |
もともと、戦後から出発なさったっていうところで、こう多様性っていうのにたどりついたっていうのは・・・
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小池 |
戦後って・・・?
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伊藤 |
あ、戦後にお生まれになって、
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小池 |
戦前に見えますか・・・(笑)
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伊藤 |
あ、ごめんなさい!あのー、自分の故郷のお話しを途中でされてたじゃないですか。そこから、今、多様であることを大切に思われているのは何か関係があるのかなと思って。
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小池 |
えっと、まずよく話をしているんですが、日立の出身であるんですね。日立っていうと日立製作所しか思い浮かばないんですけど、でも実は本当におもしろいところなんですけど、僕が育ったころっていうのが、ちょうど作業コンプレックスの街で、簡単にいうと漁港が4つか5つありますから、漁港がたくさんある。でそれから、私がこどもの頃、肥溜めがいたるところにありました。で、炭鉱街でもありましたので、日立の巨大煙突というのが有名だった。あれは日立鉱山なんですけど、黒い煙がでているのが結構ありました。でそういう鉱山の街でもある。日立製作所の街でもある。農業漁業、それから林業もありましたし、もちろん商人たちもいましたので、そういう連中が混在化していたんですよね。でそれが、同じクラスにいるわけですよ。炭鉱労働者から漁師のこどもから、みんな一緒にいるっていう。
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伊藤 |
あー。それはすごく特殊ですよね。
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小池 |
うん。それで日立の街っておもしろいのは、実は高台にのぼると、日立の街ってだーっと見えるんですね。でそのむこうがわには海がずーっとみえるんですよね。できれると山なんですよ。そんでまたグル―っと海がみえて、またきれると山っていう。つまり宇宙っていう。
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伊藤 |
玄関ていう?
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小池 |
そうですね。玄関を描いているっていう。なおかつ、宇宙ってこういうもんなんだっていう。小宇宙をそこにもがいているっていうイメージがずーっとあったんですね。
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伊藤 |
あー。
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小池 |
それがまあ、こどもの頃は嫌でしょうがなかった。
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伊藤 |
でもそれを受け入れていく過程でもあったんですよね。
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小池 |
受け入れてないですね!こどもの時は。もう嫌でしょうがなくて早く出たくてしょうがなかった。だから憧れたのは、アメリカの映画だったり、まあものすごく憧れましたね。そこからいかに変わっていったかっていう歴史でもあるんですけど。
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伊藤 |
実際作品も、最初モノトーンで、ミニマルミュージック的な、単語的なものだったり、あるいは保守的なものだったりしていたんだけれども、最後にはすごくカラフルなものになっていって、で、なんかどちらかというと非西洋圏だったりブラジルだったり、アジアだったり、バリだったり、なんかそこに西洋絶対主義じゃなくて、開いていく過程だったり、そんな感じがしました。
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小池 |
それはまあそうで、例えばバレエが一番いい例で、日本だと、これがまあ凄いことだと思うんですけど、新国立劇場がありますと。国立劇場は古典ですと。まあそれはいいんですけど、新国立劇場は、まあ新しい舞台にむかって開くんだ、って言ってるんですね。じゃあこうしていきたいといったらなにかというと、そこで、オペラだったり、演劇でいったら新劇なんですね。みんな文学座とかの演出家ですから、要するに新劇だったり、で、バレエでしょ。どこが新しい芸術なんだよ。新しいんではなくて、まあこれ、芸大とかでもそういう傾向ありますけど、先端芸術とかいいながら、先端じゃねえだろ、っていいたいところがあるわけですよ。
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伊藤 |
うん。ほんとの先端とは?ってところですよね。
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小池 |
そうそう。いつの先端だよっていいたくなっちゃうんですよね。だから、国が考える新しいとか、国が考える先端とか、どうもふた昔前くらいの・・・
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伊藤 |
うん。そうですよね。
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小池 |
新しいとか先端とか、(そういう風に)聞こえるんですよ。別にいいんですよ。オペラやることが好きな人がいてもいいし、新劇が好きな人がいてもいい。全然。それが悪いといっているのではなくて、新しいといっている中には、きちんと境界線にたつ。なんで境界線にたつことが重要かというと、それこそが、その時代を生み、なおかつ未来へのやじるしを向ける、という意識に変わっていくんですね。だからそれがなかったら、始まらないんですよ。本当は。
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伊藤 |
そうですよね。境界が既にある中にとどまっていては、現状の追認でしかない。その境界線を越えるってことが、大事だと思います。まずは一歩。
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小池 |
それがまあ、もうひとつ解散のおおきな引き金になったのが、実は今年30周年で、大きなイベントを考えていたわけですよ。それこそさっきいった、ポートルシア(?)っていうアメリカの作曲家、韓国の国立現代舞踊団っていうのと、インドネシアのケルン?財団っていうところの3つを結んで作品をつくる。日本に呼んでですね。でそれで文化庁に出してたんですよ。それが落ちたんですね。落ちた結果っていうのが、震災とほぼ同時刻くらいのタイミングでやってきたんですよ。それはいいんですが、で受かったの何かっていったら、ほとんどバレエとフラメンコですよ。
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伊藤 |
うーん。あー、そうなんだ・・・。
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小池 |
バレエとフラメンコですよ!
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伊藤 |
日本でなんで(笑)それをやるの(笑)
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小池 |
そうなんですよ。それでもう、このままだと何もないぞと。お前らやめろって言われたような気分に陥ったのも事実ですよ。
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