「ALEJO」


初演 1987年11月 吉祥寺バウスシアター

 

風が吹き、人がゆれ、舞台がはじまる・・・心地よいアンサンブルとずれゆくドラマを駆使し、観る者を終わりなき旅へと誘う演劇でない演劇。生活への刺激と心のリフレッシュのためのトータルシアター。


「私は何もない風景が好きだ。例えば、人のいない都市のような、ボルヘスの宇宙のような、熱にとけてしまうブラジルのフィルムのような、砂漠のような・・・原色の、あるいは白黒の風景。そこには圧倒される自然がある。人間の感傷的な感情を受け付けないそそりたつ壁がある。そして、ただ、空気が流れ、風が吹いている。
私が描くのは風ではない。風景でもない。どんなに寒くとも、暑くとも、ゆるやかな風の流れる場所にたつ人間である。人を見上げるのでも、見下ろすのでもなく、ただ、風の流れる風景の中に存在する人間である。まるでマルケスの「百年の孤独」に登場するアウレリャーノ=バビロニアのように、壮大な時間を内にかかえ、蜃気楼のように消えてしまう人間である。いつも、そうだ。そんな何気ない人々のなかに何気ないドラマはある。
東京という場所に長いこと立っていると、いつしか視点が虫の眼になっているのがわかる。細部へ、細部へ、と眼玉が走っていくのだ。これはおもしろいことだ。一歩離れると東京は巨大な何もない風景なのだから。私は、その中にいて、肯定するでも、否定するでもなく見つめている。東京にいながら様々な何もない風景を想っている。俳優は、さも当然のようにそこに立つ。演技することなく、重くも軽くもなく、大自然と現代が一体化した身体。私は。新たな宇宙を持った俳優がみたいのである。」 (小池博史)

 

■作・演出:小池博史
■音楽:菅谷昌弘
■美術:松島誠
■美術制作:西垣聡子、風間由利、
■衣裳:久保村朋子
■ガジェット:渡辺美岐
■照明:関根有紀子
■舞台監督:為我井真
■宣伝美術:梅村昇史


■出演 :小川摩利子,清水啓司、吉井省也、萩原薫、松島誠、宮崎聖子、今井紀彰、梅村昇史